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執行工業が“髪の毛より細い光”で描く精密板金の技術力

2025年09月15日

コラム

ファイバーレーザー切断・溶接の最前線

― 執行工業が“髪の毛より細い光”で描く精密板金の未来 ―


1. CO₂レーザーとどう違う?ファイバーレーザーの5大メリットを徹底解説

ファイバーレーザーは、光ファイバそのものを共振器として用い、内部でレーザー光を直接増幅させる「オールインファイバ構造」を採用しています。これにより、光路長を極限まで短縮し、ミラーやレンズによる反射・透過ロスをほぼシャットアウト。結果として “速さ”“精度”“低コスト”“メンテナンス性” の四拍子を同時に満たす ―― まさに次世代レーザープロセスの本命と言えます。以下の比較表では、従来主流だった CO₂ レーザーとファイバーレーザーを、代表的な五つの観点から多角的に比較しました。

比較項目 ファイバーレーザー CO₂レーザー
ビーム径 約100 µm前後。髪の毛(≈80 µm)程度で、超微細切断が可能 200 µm超。極小形状ではエッジが丸くなりやすい
光電変換効率 30〜40 %の高効率。電気入力の約1/3をそのままレーザー光に変換 10 %前後。冷却に多大な電力と冷媒を要する
対応材質 銅・真鍮・アルミなど高反射材でも切断可能 反射光が共振器に戻りやすく部品損傷のリスク
加工速度 薄板では2〜5倍、厚板でも切断面平滑 薄板は速度が伸び悩み、厚板に特化
保守性 光学ミラー不要。発振器密閉構造で粉塵影響が小さい ミラー系を頻繁に清掃・調整する必要あり

ワンポイント解説

  • ファイバーレーザーの省エネ性は、電気料金の30〜50 %削減につながり、年間トータルコストを大幅に圧縮します。
  • ただし、SUS9 mm超+鏡面仕上げなど“極厚材かつ最高意匠面”を求めるごく一部のニッチ案件では、依然として CO₂ が選ばれる余地があります。これは CO₂ が持つ長波長ゆえの溶融挙動の違いによるものです。

2. ENSIS 3015 RI――平板も鋼材も1台完結する最新鋭ハイブリッド機

執行工業が導入した AMADA ENSIS 3015 RI は、AMADA 独自の 可変ビームモード技術(ENSISテクノロジー) を中核に据えたフラッグシップモデルです。1本の光ファイバコアに対して励起条件を動的に変化させることで、薄板向けの微細・高速レーザーから厚板向けの高パワーフラットビームまで、ワンタッチで最適化。さらに ロータリーインデックス(RI) を装着することで、鋼板だけでなく丸パイプ・角パイプ・アングル・チャンネル鋼など、長尺形鋼を回転させながら全自動切断できます。

主な加工レンジ

  • 丸パイプ:Φ27.2 mm ~ Φ220 mm
  • 角パイプ:□30 mm ~ □150 mm
  • アングル/チャンネル:L19 mm ~ L90 mm、[19 mm ~ [150 mm
  • 最大加工長:6 m(最終218 mmはつかみ代)

生産性を押し上げる3つの機能強化ポイント

  1. 1.4 Gの高速加減速

    高剛性ガントリー構造とリニア駆動の組み合わせにより、ストローク往復時間を大幅短縮。小径穴が多い図面でも「動き待ち」のロスタイムがほぼゼロになります。

  2. ビーム可変・ビームモード最適化

    板厚や材質を読み取るセンサが焦点径・パワー分布を瞬時にフィードバック制御。複合板厚ワークでも段取り替え不要です。

  3. フラット ⇔ ロータリー自動切替え

    クランプジョーとサポートローラが電動でスライドし、2分以内にモード移行完了。小ロット多品種ラインでも“止まらない生産”を実現します。


3. 髪の毛より細いビームが描く“0.1 mmアート”――微細加工の実力

執行工業の公式 YouTube で公開されている 「ペン立て」 製作動画では、ワンちゃん・ネコちゃんのシルエットを細部まで切り抜く様子が映し出されています。極細のしっぽの毛並みや、肉球のわずかな凹凸さえ明瞭に描写できる理由は、以下の3点に集約されます。

  1. ビーム径 ≒ 100 µm

    実際には加工中にビームが呼吸するように10〜20 µm単位で焦点が変化。これが「切る」と「溶かす」の境界を滑らかにし、鋭利なエッジを保ちつつ溶融再付着を抑えます。

  2. 窒素ガスアシスト

    切断口に酸素を供給しないことで酸化膜(黒皮)の生成を防止。切断面は鏡面に近い銀白色を維持し、後工程での酸洗いやバフ研磨がほぼ不要です。

  3. 粗さ Ra 3.2 µm 以下

    社内測定による実績値で、JIS B0601 旧規格の「鏡面バフ仕上げ(Ra 0.8〜0.2 µm)」までは要しない意匠パネルであれば、そのまま外観部材として使用可能です。顕微鏡画像でも溶融ダレがなく、まるでウォータージェットで切ったかのようなシャープさを確認できます。


4. 熱影響を最小化する“低歪み”ノウハウ──ファイバーレーザー溶接 WT-FL2000M

ファイバーレーザーは“切る”だけでなく“つなぐ”工程でも真価を発揮します。執行工業では WT-FL2000M を導入しております。従来使用していた機種よりさらに向上した機種で出力が300Wから2000Wと大幅に向上したことにより、薄板筐体から厚肉タンクまで幅広いワークを高品質で接合可能となりました。以下では、TIG 溶接と比較した際のメリットを、改めて表形式で整理します。

比較軸 ファイバーレーザー溶接 TIG溶接(参考)
熱影響幅 1 mm以下。母材結晶粒の粗大化 数 mm〜10 mm。溶接焼け・変色が顕著
歪み量 極低歪み。矯正レスで組立工程へ直行 曲げ戻し・ハンマリング・ショットピーニングが必要
ビード幅 1mm前後。“糸”のように細く意匠面OK 1 mm以上。意匠面採用時は必ず後研磨
ワイヤ使用量 基本的に不要。母材のみで接合 フィラーが必須でコストと異材混入リスク
作業スピード TIGの3倍程度。自動化で更に加速 職人技に依存し一定以上は伸びない

技術補足

レーザー溶接時はキーホールと呼ばれる高温プラズマ柱を瞬時に形成し、その周囲でメルティングプールが流動します。高エネルギーを数ミリ秒で集中的に投入し、ほぼ同じ時間で冷却するため、熱応力の発生源を最小化。したがって歪みの“芽”そのものが生じにくいのです。これが「後工程ゼロ」の原動力になります。


5. 事例で学ぶ一気通貫プロセス:ペン立て完成までの6ステップ

  1. 2D 設計 → 3D モデリング

    ラフスケッチを 3D-CAD 化し、干渉チェックや曲げ余裕をシミュレート。初段階で不具合を“デジタル試作”することで修正コストを最低限に抑えます。

  2. NC プログラム&シミュレーション

    ENSIS 専用 CAM が工具軌跡を生成。デジタルツイン上で干渉を検証してから実機転送することで、ぶっつけ本番のリスクを排除。

  3. レーザー切断(胴体・底板)

    胴体は“面ごと切断”方式を採用し、クランプ部の応力を均一化。寸法公差 ±0.1 mm を実現し、後工程の合わせ調整を省略。

  4. ファイバーレーザー溶接

    熱影響幅 1 mm未満、ビード幅 1mm前後。外周を回るだけで気密を確保し、TIG に比べて溶接長を半減。

  5. 手仕上げ曲げ&カラーリング

    人の手で微妙な角度を追い込み、内板に塗装済みカラーパネルをインサート。ハイテク+職人技のハイブリッドが製品に“表情”を与えます。

  6. 360° 最終検査

    回転テーブルで全周動画撮影し、外観・寸法・塗装表面を一気にチェック。エビデンス動画を顧客と共有し、品質保証の透明性を担保します。

こうした 「設計 → 切断 → 曲げ → 溶接 → 塗装 → 検査」 のフルラインナップを自社1拠点で完結できる体制が、短納期・高品質・小ロット対応を可能にしています。


6. 執行工業が選ばれる4つの理由

  1. 少量多品種 × 短納期

    1台・2台からでも“断らない”。社内に豊富な在庫素材を持ち、急ぎの調達レスポンスも高速です。

  2. 幅広い材料対応力

    鉄・SUS・アルミ・銅・真鍮といった金属系に加え、異種金属接合の試作ニーズにもチャレンジ。

  3. 提案型エンジニアリング

    「そんな発想はなかった!」と顧客を驚かせるアイデア提案が強み。コスト・意匠・強度の三要素を同時最適化します。

  4. 見学歓迎・技術公開

    千葉県野田市の工場では、ENSIS・OPTICEL の実稼働を間近で見学可能。加工音やレーザー溶接の“無スパッタ”をその目でご確認いただけます。


7. まとめ&お問い合わせ

ファイバーレーザーは「速い」「歪まない」「多彩な材質に強い」という三大メリットを併せ持ち、今や精密板金加工の新たなスタンダードとなりつつあります。執行工業は ENSIS 3015 RIWT-FL2000M をコアに据え、切断・溶接・曲げ・塗装をワンストップ提供。

「図面無しのイメージスケッチしかない」「ブランド什器の意匠パーツを短納期で仕上げたい」「試作品1個だけでも相談したい」—— そんなお悩みがあれば、ぜひお気軽にお声掛けください。髪の毛より細い光で、あなたのアイデアを確かな形にします。

お問合せ窓口

04-7138-0311(平日 9:00〜17:00)

info-shigyo@shigyokk.com

〒278-0012 千葉県野田市瀬戸930

執行工業株式会社は、“世界に誇れる技術力” をさらに磨き上げ、日本のものづくりの未来を切り拓いていきます。

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